薄暗い暗黒城の玉座に腰掛けて、アザゼルは考えていた。
既に二人の純聖天使を捕らえたアザゼルであったが、そのうちの一人、プリミティ・ノエルは魔界の予言によると、『魔族全てを浄化する救世主を生み落とす為の聖母』であり、放置しておけばいずれ救世主を産み、人間界に潜伏する魔族はおろか、魔界のすべてを滅ぼす恐るべき破壊者となると言われている存在だ。
そして、その姉「プリミティ・カノン」はそれを守護する「使徒」としての運命を持つという。
――しかし、伝承にはもうひとつ、裏の予言があった。
すなわち、『聖母』を汚し、その胎内に魔の精を注ぎ込んで孕ませることができれば運命は書き換えられ、『聖母』は『大淫婦』に代わり、生まれてくる『救世主』は『闇の救世主』となり、邪悪の帝国が築かれるというのだ。
また、それを守護する「使徒」も魔の精を注ぐことにより、「闇の使徒」へと変質を遂げるという。
それに、ノエルたちを探す二人の純聖天使たちが人間界に現れたという話もある。
様々な思惑を巡らせつつも、アザゼルにはもうひとつの企みがあった。
神の御遣いたる『純聖天使』を堕落させ娶り、『闇の花嫁』として反旗させ神の喉元へ刃を向けさせるのだ。
これほど神にとって屈辱的なことはあるまい。
どうやら誰からどのように責めるべきか決まったようだ。
「ザビエラよ」
アザゼルは氷のような冷笑を浮かべながら、下僕である大男に彼女を連れてくるように命令するのだった。 |
